女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。






ゆっくりと、だけど着実に時間は流れていく。

寒く長い冬を乗り越え、いつの間にやらあちらこちらで春の兆しが見えるようになった。

そんな三月の某日。



「ちょーっと盛大にやりすぎじゃないですかね卒業式。卒業生95%は内部進学ですよ!? 何で皆今生の別れみたいなテンションで盛り上がれるんですか??」



先ほどまで卒業式が催されていた講堂で、私はたらたらと文句をこぼしながら後片付けを手伝っていた。

せっせと動いているのは、先生方にも「雑用を押し付けていい存在」として舐められている庶民特待生たちが私を含め数名。

その中の二年男子の先輩が、気だるげに手を動かしながら答えた。



「ま、パーティーみたいなもんなんじゃない? 実際今からプロムがあるわけだし」


「アメリカなんですかここは……」


「日本のはずだね」




プロム。簡単に言えば卒業パーティー。

参加するにはパートナー必須の、海外ドラマとかで見かける超華やかなあれだ。