女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





「そんな風に言われては、後ろ向きなこと言ってはいられないな」


「! じゃあ……」


「瀬那がいつ来ても大丈夫なように、観光名所や美味いレストランをちゃんと調べておこう」



先輩の言葉に、つられて表情が緩んでいく。

じわじわと、胸の内に温かなものが広がっていっているような気持ち。




「約束ですよ」


「ああ」


「それに、卒業までにたくさん思い出作りますからね」


「もちろんだ」




先輩のことを思いっきり抱きしめたいようなそんな気分になったけど、道のど真ん中なのでどうにか耐えた。


寂しい、けど嬉しい。でもやっぱ寂しい。

こうやって背中を押したこと、今日家に着く頃には既に後悔しているかもしれない。


だけど……

きっと今日のこと、数年後には良い思い出として二人で語り合っているのではないだろうか。

何となく、そんな予感がしていた。