女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




「日本からフランスまで、直線距離で9,700㎞、飛行機で13時間……ってところでしたっけ。そんなもの大した距離じゃないですよ」


「……そうだろうか」


「そうですよ。というか今時ビデオ通話でも何でもできますし。先輩がちょっと嫌気がしてくるぐらい頻繁に電話してあげます」


「きっと一日に何度通話したって物足りない気分になると思う」


「じゃあ、バイトしてお金貯めて、フランスまで会いに行ってあげます」


「うちの高等部はアルバイト非推奨だぞ」


「そうでしたっけ」




だけどあくまで“非推奨”なら、完全に禁止ではないのだろう。

きっと、良家の子息令嬢がその辺の店でバイトをするのはいかがなものか……という学園の方針とかそういうの。

だったらそんなもの、庶民の私は知ったこっちゃない。




「……ははっ」




ぶつぶつ呟きながらフランス旅行の資金を真剣に計算し始めた私を見て、律弥先輩は明るい笑い声を上げた。