女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




私は、自分がまたしても息を止めていたことに気が付いた。


正直言ってかなりショックの大きい話だ。

過去のこととはいえ、どう声を掛けるのが正解かわからない。


そんな私の顔を見て、先輩は安心させるように表情を緩めた。




「せっかくのデートなのに、変な話しを聞かせて悪かった」


「そんなこと……。でも、どうして話してくれたんですか? 思い出すのも辛いんじゃないですか?」


「瀬那に俺のことを少しでも知ってもらいたくなったんだ」




留学のことを黙っていたせいで機嫌を損ねてしまったし、と律弥先輩は冗談っぽく付け足す。


私は一瞬ぽかんとして先輩の顔を見つめた。

その後「何ですかそれ」と思わず笑ってしまう。

そんな理由で、わざわざ嫌な過去と向き合うような真似をしたのか。


ふっと思わず吹き出して、肩を震わせながら一通り笑った。そしてそっと息を吐く。




「なるほど。……じゃあ辛いことを思い出してまで話してくれたお礼に、こっちからも一つ、先輩の知らない私の秘密を教えてあげましょう」