女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





「少し歩くんだが」


「私は構わないですけど、何があるんですか?」


「まあ、ちょっとな」




先輩はそれきり黙って歩き始めた。

私はよくわからないまま歩いていくけれど、その目的の場所が近づいてくるにつれ、律弥先輩の表情は険しくなっていくような気がした。

向かっているのは決して楽しい場所ではないようだ。それだけは何となくわかった。


──そして、ニ十分ほど歩いた末、先輩はようやく立ち止まった。




「何だ、案外平気だな」




そんな小さな呟きを聞いて、私はようやく口を開くことができた。




「何かあるんですかここは」


「小学二年生まで、俺はここの先にある小学校に通っていたんだ」


「えっ、ずっと星彩学園にいたわけじゃないんですか?」


「星彩学園は閉じたコミュニティだから、小学生の間ぐらいは別の世界を知っておいた方がいいだろうっていう両親の方針だったんだ」