女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





十分すぎるぐらいにファミレスを満喫した後、私たちは店を出て周辺をぶらぶらと歩いていた。




「川咲、この後も何か予定があるのか?」


「呼び方戻ってますよ律弥先輩」


「あ……瀬那」


「先輩をファミレスに連れて行こうとしか考えてなかったので特に何も考えてないです。目的もなくテキトーに歩きながらおしゃべりするのも、高校生のデートっぽくて良くないですか?」


「確かにな」




先輩は嬉しそうに笑って、そっと私の手を取った。

手汗とか大丈夫かなと若干心配になりながら、私もきゅっと握り返した。


少し前までは、先輩が私と手を繋ぐのは女性恐怖症克服のための“練習”だった。

それが今では、ただ繋ぎたいからという純粋な気持ちだけでこうしている。

同じ行動でもここまで気持ちが変わるなんて、全然想像していなかった。




「ああ、でも……特に予定がないなら、一つ付き合ってほしい場所があるんだ」




律弥先輩は、周辺案内地図の前で不意に立ち止まった。

どこに行くんですかと聞けば、地図の端の方を指さす。

そこは建物ではなく、ただの道だった。