女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




「良いですよ。ぜひ好きな呼び方をしてください、律弥先輩」




ちょっとからかう感じで言えば、先輩は動揺したようにガチャンとフォークをお皿にぶつけた。

先輩にとっては、人をファーストネームで呼ぶということは何かしら大きな意味があるのだろう。




「せ……」


「せ?」


「瀬那」




結構な間があった後、ようやく彼の口から発された馴染みの名前。

気恥ずかしそうに頬を染めるのを見て、私は思わず笑みをこぼした。


ああ、なるほどな。

確かにこうして改めて呼ばれると照れくさくて……同時に、すごく嬉しいかもしれない。


私は思わず笑みをこぼしながら「はい」と返事をするなどしてみたのだった。