女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




とことん自分を甘やかさない方向に行くのが先輩らしい。

だから、先輩が指を組んですっと視線を逸らしながらこう言ったのには少し驚いた。




「だが、テストがどうという問題ではなく、ただ単にまだ迷っているんだ」


「えっ、どうして……。あ、そっか女性恐怖症……」




私に対する態度がこれだからつい忘れかけてしまう。

先輩は私のおかげで改善してきているとは言っているけれど、学園祭のときだってそれが原因で倒れたらしい。

今は事情を知る天ヶ瀬先輩や学校医の先生たちがいるけれど、遠い異国の地にそんな人たちはいない。不安が大きいに決まっている。

そんな風に納得したのだけど……。




「まあ、それもあるが……それよりもっと重要な問題があるだろ」




先輩は神妙な面持ちで首を振った。

……女性恐怖症で苦労すること以上に重要な問題って何だろう。


眉をひそめた私に、彼はこれまた真剣な口調で言った。




「留学なんてしたら、川咲と離れ離れになってしまう」


「え? あ、はい。そうですね」