すると先輩のお母さんは口元に手を当ててクスクスと笑う。
「ふふふ。わたしもね、実家はセレブとは程遠い普通の家庭なの。今の生活は結婚してから」
「え?」
「だから周りがすごい家の子たちばかりで肩身が狭い思いをする気持ちはよくわかるわ。だけど,
どうか畏まらないでください」
「……すみません」
頬がかっと熱くなる。
嫌だな。
どうやら家柄だ何だと気にして勝手に劣等感を抱いていたのは私の方だったらしい。
考えてみたら、あの加賀見先輩を育てた人なのだ。
むしろこの人は、庶民の私に親近感すら覚えていたのかもしれない。
──それに気付いたその後は、車が止まるまでの間、私と先輩のお母さんはこれでもかというほど話に花を咲かせた。
こちらは学校での先輩の様子を色々と話し、向こうからは幼い頃の彼の話を聞いた。
先輩のお母さんは、家で顔を合わせたときに受けた印象の通り、上品な見た目と愉快な性格を兼ねそろえた人だった。



