女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




話したいことが上手くまとまっていないようで、先輩のお母さんは言葉を区切りながら慎重に話す。




「前に女の子を連れてきたと思った喜んだら、女装した天ヶ瀬くんだったってことがあったのよ。信じられる?」


「へ?」


「学校にちゃんと女子の友達がいるってところを見せてわたし達を安心させようと思ったらしいけど……逆に心配になるわよねあんなの」


「そりゃそうです」




そんな前科あったんかい。

頭に学園祭のときに見た女装天ヶ瀬先輩の姿が浮かぶ。

あんな美少女が実は男だったなんて、自分の目を信じられなくなっても仕方がない。

もう女装男子を疑われたことに何一つ怒れなくなってしまった。




「だから今日、貴女がうちに来てくれたこと、本当に嬉しくて」


「いえいえ、そんなっ! 私の方こそ、良家のご令嬢でもなんでもないのに先輩と仲良くさせてもらっていて申し訳ないというか……」




覚悟していた家柄云々の嫌味は一向に向けられず、むしろ喜びの言葉だけが繰り返されるので、ついつい自分からそんなことを言ってしまった。