女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




恋人になら、アクセサリーを贈るのも許される。

私たちにあるその共通認識の元でのその言葉は、実質交際宣言のようなものだった。

それに気が付いた先輩は静かに息を吸った。

驚いたような表情は、やがて柔らかく綻んでいく。




「ああ!」




ネックレスを付けてもらいやすいよう、私は自分の長い髪をそっと持ち上げる。

心臓の音が、静かな部屋で大きく響いている気がする。

加賀見先輩は割と手先が器用なようで、特に苦労することなくチェーンを私の首の後ろで留めた。


チェーンがひんやりと首にまとわりつく感覚は嫌いじゃない。

私は制服のポケットに忍ばせてある小さな鏡を取り出して、そのアクセサリーを確認する。




「綺麗……」




うさぎのモチーフだといっていたから、高級ジュエリーとしては子どもっぽいデザインなのかと想像していたけれど、全然そんなことはなかった。

おちついた色味のシルバーがうさぎのシルエットに切り抜かれていて、隣の蜂蜜色の小さな宝石と一緒に揺れている。