女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





「そもそも私は、恋人になるとかそういう発想が先輩の頭にあるなんて思ってなかったんです!」


「どういうことだ?」


「だってそうでしょ。女性恐怖症のせいで恋愛どころか女子友達だってまともに作れない人が、ちょっと恋愛感情を自覚したぐらいで次のステップに進もうって発想ができるなんて思わないじゃないですか」


「な、それぐらいの発想俺にだってある! 何度も想像した!」


「うぐ……」



本当にこの人はこう、全てが真っ直ぐというか。

ごちゃごちゃ考えるのが馬鹿らしくなってくる。


私たちは数秒間真剣な顔で見つめ合って、……それから同時に吹き出した。




「なんだ。それならあのときにちゃんと付き合いましょうって言えば良かったです」


「そうだな。きちんと言葉にしておくべきだった」


「あの、先輩。……そのネックレス、私に付けてくれませんか?」