女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





口を閉ざした先輩から表情が消えていく。

そのままゆっくり上を見て、目を閉じて。

開いて、また私を見て、視線だけ逸らして。

何かを言おうと口を少し開いたけれど、上手く言葉が見つからないのかすぐに唇をきゅっと結び、それでももう一度開いて息を吸う。




「つ……」




そして絞り出したその声はあまりに弱々しい。




「付き合ってなかった……のか?」




それを受けた私も、曖昧さたっぷりの疑問形で答える。




「たぶん……?」


「ええっとつまり、学園祭の日に保健室で休んでたら川咲が来たのは夢か?」


「いや、それは私にも同じ記憶があるので現実だったのではないかと」


「俺の記憶が正しければ、半分寝言みたいに好きだと言ってしまったのを川咲に聞かれて大恥をかいたと思ったら、なぜか川咲も俺のことを好きだと言ってくれたような気がするんだが」


「言いました」


「でも、俺たちは付き合っていなかった?」


「だって、付き合おうとは言ってなかったと思うんです……」