女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




本人は散らかっていると言っていたが、それは謙遜だったらしい。

広さに対して物はそう多くなく、むしろモデルルームかと思うぐらい生活感が無い。天井も高いのも相まって解放感がすさまじい。


人の部屋なのについじろじろと観察してしまっている私に、加賀見先輩は少し居心地悪そうに笑った。




「別に面白いものじゃないと思うが。想像してたより普通普通の家だろ?」


「んなわけないでしょ。このお家で普通だったら川咲家は犬小屋ですよ犬小屋」


「犬小屋……?」




犬小屋は言い過ぎか。30年ローンに苦労してるお父さんお母さんごめん。いつもありがとう。


馬小屋に訂正しておくよ。




「中野さんにお茶を持ってきてもらう……のはやめておこう。自分で持って来るからくつろいでいてくれ」




先輩はそう言って、入ったばかりのドアをまたくぐる。


先ほどのやり取りを思い出してげんなりしたのか、先輩はせっかくの使用人を活用しない方向に決めたようだ。