女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




そんなことを思ったのと同時に、またぐいっと手を引かれた。

加賀見先輩は立ちはだかるお母さんをひらりとかわすと、私の手を引きがらアーティスティックな階段を上品さの欠片もなくバタバタと駆け上がる。




「待ちなさい律弥!」


「奥様、高校生の体力に張り合うのはおやめください。あとで筋肉痛で苦しむことになりますよ」


「だって! あの律弥が女の子を連れて来たのよ? 未来の娘をもっとよく見たいんだもの!」


「お気持ちはよくわかりますが、坊ちゃんにまた怒られから」




階段下には、私たちを追いかけ階段を駆け上がろうとするも、執事さんに止められ悔しそうな先輩のお母さん。

今度は無事に逃げられたようだ。

手を引かれつつ、先輩に一応聞いておく。




「あの……お邪魔させてもらっているわけですし、やっぱりお母さんにちゃんと挨拶しておいた方が良くないですか?」


「やめておいた方がいい。日が暮れても解放されない」




……そうか。ならやめておこう。