女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





「やめてくれ。冗談だとしても川咲が不快な思いをしたらどうするんだ!」


「でも律弥、あなたが女の子と一緒にいるのなんて初めて見たわよ? あなたにとってこの子は特別ってことでしょ? つまり結婚するんでしょう?」


「もう少し人の話を聞く姿勢を見せてくれないか!?」




そんな調子で言い合いを続ける親子を、私は改めて観察した。


……それにしても綺麗なお母さんだな。

先輩とめちゃくちゃ似ているというわけではないけど、纏う雰囲気がどことなく近しい気がする。

先ほどドタドタと音を立てながら階段を駆け下りてくるところを見ていなければ、一つ一つの美しい所作に上流階級みを感じて委縮していたことだろう。




「とにかく! 川咲のことは俺がもてなすから気にしなくていい。中野さんも」


「そんなつれないこと言わないで母に瀬那さんを観察させなさい。あ、ちょっと律弥」




観察って。そこは「お話しさせて」とかじゃないんだ。