女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




そんなことを考えていた私に、先輩のお母さんは変わらず探るような視線を向け続けている。

だけどやがて、ふっと息を吐いて静かに目を閉じた。

さあ、何を言われるだろう。私はごくりと唾を飲んで身構える。




「それで? 瀬那さんはいつ嫁に来てくれるのかしら」


「………………………………はい?」




想像とは大きく大きくかけ離れた質問だった。

さも当然のように。決定事項であるかのように。

先輩のお母さんの目は真剣そのもの。




「母さん? 何を……?」




加賀見先輩は表情に焦りをにじませながら、自分の母親に詰め寄る。




「あらごめんなさい。さすがに気が早かったかしら」


「気が早いとかの問題じゃない」


「瀬那さんが高校一年生なら、少なくとも結婚できる年齢になるまであと二年あるものね」


「いや、だから……」




先輩のお母さんの鬼気迫る表情はいつの間にか和らいでいて、今はずいぶんとにこにこ楽しそうにしている。

そして、それと反比例するかのように、先輩の表情は険しくなっていく。