バタバタとせわしない音が聞こえてきた。
音の方を見ると、レトロで美しい階段の上に、髪を明るめの茶色に染めた40歳になるかならないかという年代の女性がいる。
「ちょっと中野さん本当? 律弥が女の子を!? 女装した男子高校生ってパターンじゃないでしょうね??」
女性は、裾の長いワンピースに足をとられそうになりながら、どたどたと階段を駆け下りてくる。
……てか女装男子ネタ好きだなここの人たち。流行ってるのか?
「まずい。川咲、逃げるぞ……」
こちらへ向かってくる女性に気が付いた加賀見先輩は、顔を引きつらせて、呆然としていた私の手をとった。
だけど先輩がその手を引っ張るより、階段を駆け下りた女性がものすごい勢いのまま私の前に立ちはだかる方が早かった。
女性は鬼気迫る表情で、正面からじっと私の顔を見る。
そして──
「本当に女の子だわ……」
しみじみと、信じられないものを目の当たりにしたという表情で呟いた。



