女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




「こ、こんにちは。川咲瀬那と申します。えっと、これよろしければ……」




我に返った私は、慌ててその執事らしき老紳士に自己紹介をして、持ってきた手土産を渡した。

こういうの執事さんに渡すので合ってたのかな? と渡してしまってから心配になったけれど、丁寧にお礼を言ってもらえたから大丈夫だったのだろう。


執事さんは私からお菓子を受け取ると、上品な笑顔を浮かべ、まっすぐ私を見た。

そしてその視線は私の頭のてっぺんへいき、順々に足の先まで下がっていく。

それからまただんだんと上がっていき、視線が私の顔へと戻ってきた頃には──老紳士の顔から柔和な笑みは消え、代わりに驚愕の表情が浮かんでいた。




「じょ、女性ではありませんか」




……え、今?

思いがけない反応に戸惑う私に、執事さんは声を震わせながらさらに問う。




「ま、まさか……実は声が高くて髪が長くて女装癖のある男性……ということは……ございませんかね?」


「は!?」