女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




なんと素晴らしきタイミング。


先輩は、黒いシャツとグレーのパンツという比較的ラフな格好をしていた。

普段は見られないオフの姿だ。ちょっとばかり背徳感がある。




「入ってくれ。迷わなかったか?」




豪邸をバックにしているせいか、加賀見先輩がいつもの三倍ぐらいきらきら輝いて見える。




「はい。道はわかりやすかったので」


「インターホンを押すかどうかはずいぶん長いこと迷ってたみたいだけどな」


「なっ、なんで知って……」


「そこに防犯カメラが付いてるんだ。そろそろ来る頃かと思って中で確認したら、うちの制服を着た怪しい人影がうろうろしているのが見えた」




なるほど、それで出てきてくれたのか。タイミングが良いわけだ。

そしてやっぱり怪しかったんだな私。


恥ずかしさに耐え忍びつつ、加賀見先輩の案内で立派な庭を横切り、擬洋風建築の建物の前へとたどり着いた。

自分の家なのだから当然だけど、重々しいドアを開ける様子も大変慣れている。