女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





女性恐怖症の加賀見先輩だって恋愛経験があるとは考えにくいし、同じような気持ちじゃないかとは思うけど。

せめてもう一度ぐらいあの日言われたのと同じ言葉を聞きたい。


そうしないと、私の中でどんどんあの日の現実味が薄れていってしまう。

今も既に、聞いた言葉や過ごした時間は白昼夢か妄想だったのでは……という不安が芽生え始めているぐらいだ。



とにかくそんな感じで、今日この日を迎えた。

迷った末に服は制服、手土産はスーパーの贈答品コーナーにあったマドレーヌ。




「インターホン……はこれか。うっ……押していいのかな……誰が出てくるんだこれ」




豪邸の門の前でうろうろすること数分。たいそう怪しいことだろう。

このままでは通報されるかもしれないと心配になり始めたとき、がらがらと音を立てて門が開いた。

敷地の中から現れた人を見て、私はほっと胸を撫で下ろす。




「加賀見先輩!」