女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





先輩は右腕で目を覆いながら仰向けになっていた。

どうやら目は覚めているらしく、私の気配に気付いて声を上げた。




「悪いな、俺の分まで買ってきてもらって」




一瞬何のことだろうと思ったけれど、すぐに累くんから渡されたペットボトルの存在を思い出した。

恐らく累くんは、先輩を保健室に連れて来た後、お茶を買ってくると言って出ていたのだろう。


つまり加賀見先輩は、入ってきたのは累くんだと勘違いしている。


いきなり声を掛けたら驚かせるかも……と迷いつつ、私はとりあえず黙ったままベッド脇の机にお茶を置いた。




「さっきの話だが」




すると先輩は、ここにいるのが累くんではないと気付かないまま話し始めた。




「例え他に恐怖を感じない女子が現れようと、女性恐怖症が完治しようと、俺は川咲以外を好きにならない」




先ほどまで加賀見先輩と累くんがどんな話をしていたのか。それはさっぱりわからない。




だけど……私の耳は確かに今、聞き逃してはならない言葉を拾った。