だけどそんな疑問をぶつける間もなく、累くんはポケットからスマートフォンを取り出した。
画面を見て少し顔をしかめる。
「あ、やべ。姉さんからだ。『どうせ暇なんでしょう、学園祭案内しなさい』って、オレの都合完全無視かよ。ま、暇になっちゃったのも本当だし、行ってやるか。……てわけで、オレ行くね。あ、このお茶センパイに渡しといてくれる?」
早口でそう言った累くんは、持っていたペットボトルのお茶を私に押し付けると、くるりと方向を変えてさっさと歩いていってしまった。
角を曲がって姿が見えなくなり、私は保健室前で一人残された形となった。
「……」
私は、渡されたお茶と保健室の扉を交互に何度か見比べる。
それから意を決して、その扉を開けた。
──一昨日、加賀見先輩が他の女の子と仲睦まじそうにしているのだと勘違いして落ち込んだことで、自分の気持ちに気が付いた。
数十分前、その加賀見先輩の親友から背中を押された。
そして今、累くんから「したいようにすればいい」と言われた。



