女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





きっといつもの人懐っこい甘えた声で、嫌だと駄々をこねてくるだろうな。

そう思いながらちらりと累くんの顔を見た。


だけど累くんは、予想に反して静かに寂しそうな表情を浮かべているだけだった。




「累くん?」


「……いいよ」


「え?」


「瀬那のしたいようにしたらいいよ。埋め合わせなんてなくていい」


「え……本当、に?」




累くんらしくない物わかりの良すぎる態度。私は目を瞬かせる。




「だって瀬那、今日誕生日でしょ? 誕生日の子の希望は無条件で聞き入れろって教育されてきたんだよねオレ」


「そ、そうなの?」


「うん。誕生日おめでとう瀬那」


「ありがとう……」


「加賀見センパイには祝ってもらった?」


「ううん。そもそも私の誕生日なんて知らないだろうし」


「そっか。じゃあお祝いをした早さだけはオレの勝ちだね」




にっと笑ってピースしてみせる累くん。

その表情はいつもの見慣れた彼のもので。先ほどの妙に憂いを帯びた表情は何だったのだろう。