女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





「悪いな、俺の分まで買ってきてもらって」




横になったまま、右腕で両目を覆って光を遮りつつ言う。

また恩着せがましい言葉を投げかけられるかと思ったが、岸井は特に何も答えない。

ベッド脇の台にことんと買ってきた飲み物か何かが置かれたような音だけが聞こえた。




「さっきの話だが」




あの質問に対して、説得力のある説明なんて結局何も思いついていない。でも約束だから答えなければ。

頭が覚醒しきっていないせいなのか、そんな妙な使命感を持ってしまう。




「例え他に恐怖を感じない女子が現れようと、女性恐怖症が完治しようと、俺は川咲以外を好きにならない」




他に人のいない保健室。俺の声は妙にはっきりと響き渡る。




「気が付けば彼女のことばかり頭に浮かんできて、俺の知らないところで別の男に笑顔振りまいてるって考えるだけで、嫉妬でどうにかなりそうなんだ。……こんな厄介な感情、そう簡単に他の相手に向けられるわけがないだろ」




短く息を吐き、腕を天井に伸ばした。

それからゆっくりと目を開けて、岸井累がいる方を向く。