女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。



そして純粋に疑問に思う。



「……どうしてそんなこと、オレに教えたんですか?」




完璧とも思える御曹司の決定的な弱点。

少し寝不足で本調子じゃなかっただけだ……とでも言えばそれ以上追及しなかった。いくらでも誤魔化せたはずだ。

オレの問いかけに、加賀見律弥は少し力のこもった声で答えた。




「フェアじゃないと思ったから」


「は?」


「お前も不思議に思っただろ? 俺と川咲の接点がいったい何なのか。それがこの症状に関係していてな」




いきなり出てきた瀬那の名前に、オレはパッと顔を上げた。

そうだ。女性恐怖症というにしてはこの男、ずいぶん瀬那にべたべた触れていたように思う。だからこそオレはこいつのことを目の敵にしていたわけで。




「まさか女性恐怖症だけど瀬那だけは平気……なんて都合の良いこと言うつもりですか」


「まあ、そのまさかだ。出会った頃から彼女に対してはほぼ恐怖心が芽生えなかった。だから、女性に慣れるための練習に協力してもらっている」