女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




瀬那と約束した時間まであと三十分ぐらいある。

楽しみで仕方がない一方で、どこかやるせない気持ちが拭えない。


二人きりで過ごしたって、さりげなく手を繋いでみたって、分かりやすく好意を伝えてみたって。

瀬那がオレに向けている目は、オレが欲しいものとは違う。


オレが向けて欲しい目を向けている相手は……。




「くそ、腹立つ」




考えるだけでむかむかしてくる。


加賀見律弥。オレより二つ年上の18歳。

実家は名門・加賀見家。成金と馬鹿にされることもある岸井家とは格が違う。

外見はそれほど飾り立てていないのに、十分すぎるぐらい目を惹く整った顔と華のある雰囲気。

完璧すぎて近寄りがたいとか、親しみやすさに欠けるとか、そういう声は聞くが、そんなものは大した欠点ではない。


そんな癇に障る男が、瀬那がオレに向けてくれない目を向けている相手。

ついでに言えば、今ちょうどオレの視界の端にいる。



実行委員と書かれた腕章を付けた加賀見律弥は、どうやら現在この付近の見回りを担当しているようだ。ご苦労なことで。