女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。




「暗いから足元に気を付けてくれ」


「は、はい」




人工的な光に溢れた夜の街を、加賀見先輩は迷いなく進んでいく。

私はまだまだ動きそうにない車の列に一瞬目をやった後、駆け足で先輩を追いかける。




「五秒前に『足元に気を付けて』と言ったばかりなんだが。転ぶぞ」


「先輩が歩くの速いんです。はぐれたらどうするんですか」




過保護な先輩は駆け寄ってきた私に眉をひそめたので言い返す。


すると先輩は自然に……ごく自然に……私の手をぎゅっと握った。




「えっ」


「こうしたら絶対に見失わないだろ」




女性恐怖症克服の練習として、何度も何度も手を繋いではきたけれど。

外でこうして歩きながらというのは初めてで。


きっと周りから見たら完全に恋人同士とかに見えるんだろうなと気が付いて、変に心臓が騒ぎ出す。

嫌な気分というわけでは全くない。むしろそわそわと浮かれている。


……なんかもう、花火なんてどうでもよくなってきた。