女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。





「始まったみたいですね。あ、あっちの方ちょっと空が光ってる」




音が聞こえるのに見えない花火って何だか寂しい。

少しだけでもいいからどうにか見えないかな……なんて思って、懸命に窓の外をのぞく。

だけど、緑や赤に光る空がどうにか見えるだけで、花火本体は建ち並ぶビルに隠れて全く見えそうにない。


花火の時間は一時間ほど。

今から徐々に渋滞が解消されたとして、パーティー会場であるホテルラウンジに着く頃にはもうほとんど終わっているんだろうな。

見たかったなあ、高層階からの目線と同じ高さの花火。




「川咲、少し歩けるか?」




小さくため息をついたとき、加賀見先輩がそう問いかけてきた。




「え? まあ、大丈夫ですけど……まさかホテルまで歩くつもりですか?」


「さすがにそれは無理だが、この近くにもちゃんと花火が見える場所があるはずだ」




先輩は運転手さんに断りを入れて車のドアを開けた。

私は驚きつつも、手招きされて一緒に車から降りる。