人魚の鼓動はあなたに捧ぐ




「じゃあやっぱり、おれの知ってる人ってことか。……そう言っても、小さい島だからみんな知ってるんだよな」

「そっか……あっ、でも、『あんた』って呼ぶような人で絞ったらどうかな?」

「……ごめん、おれ、口悪いから誰にでも言うと思う」


 つまり殺人犯は、この島に住む男の人ってこと。

 絞れたのは、そこまでだ。


「それじゃ、犯人のことは置いといて──あとは、死んだはずのわたしたちがこうして生きていることと、どうして殺されないといけないのかを知りたいんだけど……なにか、わかるかな」

「……わからないけど、おれ、ちょっと思ったことならあるよ」

「それ、教えてほしいな」


 憶測でも、勘でも、なんでもいいから知りたかった。


「お姉さん、まがはみ様って知ってる?」

「ああ、その名前と、お祭りがあるって話なら聞いたよ。まがはみ様って、神様なの?」

「そう。まがはみ様は、この島の守り神なんだけど──」


 ふいに少年の足元に黒いものが流れ着いて、言葉が止まる。

 波が引いてからよく見ると、それはひしゃげた魚のようだった。

 頭の部分に、特徴的な突起がある。


「……チョウチンアンコウ?」

「……初めて見た。地鳴りのせいか?」


 見慣れない魚。

 それが打ち上がる浜辺、不可解な地鳴り。

 やっぱりこの島だって、きっとなにかがあるのだろう。

 そんなことを考えていると、しゃがみこんで魚を眺めていた少年の視線が、ふいにわたしの背後へと移った。


「あっ……」