『霞、お母さん仕事に行くから、お昼
食べられそうなら少し食べてから
お薬飲みなさいね?何かあったら
連絡しなさいよ?』
「ゔん‥わがった‥‥ゴホ‥ゴホッ」
部屋の扉が閉められると、
布団に入ったまま瞳を閉じる
ゔ‥‥体中が痛いし寒い‥‥
雨の中を走ったからか、
せっかくの週末なのに高熱が
出てしまい、病院に行ってきたのだ。
良いことを誰かにしたからって
浮かれていたのかもしれない‥‥
春がすぐそこまで来ている季節でも
朝晩はかなり肌寒く油断したな‥‥
マスターには今朝早めに連絡をして、
数日アルバイトをお休みさせて
もらうことが出来たけれど、
筒井さんに会えないことが堪らなく
寂しくて仕方ない‥‥‥
あと1月しか働けないのに、
何度会えるかも分からない‥‥。
それなのに寝込んでしまうなんて‥‥‥
筒井さんは風邪をひいてないといいな‥
彼が濡れて風邪をひいてしまう方が
よっぽど嫌だから‥‥。
しっかり治して元気にまたアルバイトに
早く行けるようにしないとな‥‥
そんな願いも虚しく、
それから平熱に戻るまで2日を要し、
咳と鼻水が治らず、結局その週は
1日もアルバイトに行けなかった。
「マスター‥‥長い間お休みして
ご迷惑をおかけしました。」
咳は殆ど出ず体調は落ち着いたものの、
念の為マスクをしたまま8日ぶりに
珈琲専門店へと来ることができた。
久しぶりの香ばしい香りに包まれると、
ホッとしてしまうほど癒されていく
『霞さんお帰りなさい。
気にすることはありませんよ。
無理のないように
働いてくださいね。』
「はい、ありがとうございます。」
久しぶりのマスターの優しい言葉に
胸が温かくなり、お辞儀をすると
フロアに出ていつものように働いた
募集なんてしていなかったのに、
私の熱意に参りましたと
快くバイトとして雇ってくれた
マスターともあと1ヶ月でお別れだ
勿論お店はなくならないし、
次はお客として珈琲を飲みに来れば
いいのだけれど、やっぱり思い入れが
ある分、考えるととても寂しい‥‥
カランカラン
「いらっしゃいませ。
お好きな席に‥‥‥ッ」
おしぼりを補充していた私は、
ドアの向こうから入ってきた人に
心臓が大きく跳ねた
『こんにちは』
『い、いらっしゃいませ‥‥
こ、こんにちは。』
筒井さん‥‥‥
いつもの窓際には行かずに、
カウンターに荷物を置くと、鞄から
綺麗に折り畳まれた水色の傘を私に
そっと差し出してくれた
『先日はありがとう。
おかげさまで濡れずに帰れたから
助かったよ。』
ドクン
食べられそうなら少し食べてから
お薬飲みなさいね?何かあったら
連絡しなさいよ?』
「ゔん‥わがった‥‥ゴホ‥ゴホッ」
部屋の扉が閉められると、
布団に入ったまま瞳を閉じる
ゔ‥‥体中が痛いし寒い‥‥
雨の中を走ったからか、
せっかくの週末なのに高熱が
出てしまい、病院に行ってきたのだ。
良いことを誰かにしたからって
浮かれていたのかもしれない‥‥
春がすぐそこまで来ている季節でも
朝晩はかなり肌寒く油断したな‥‥
マスターには今朝早めに連絡をして、
数日アルバイトをお休みさせて
もらうことが出来たけれど、
筒井さんに会えないことが堪らなく
寂しくて仕方ない‥‥‥
あと1月しか働けないのに、
何度会えるかも分からない‥‥。
それなのに寝込んでしまうなんて‥‥‥
筒井さんは風邪をひいてないといいな‥
彼が濡れて風邪をひいてしまう方が
よっぽど嫌だから‥‥。
しっかり治して元気にまたアルバイトに
早く行けるようにしないとな‥‥
そんな願いも虚しく、
それから平熱に戻るまで2日を要し、
咳と鼻水が治らず、結局その週は
1日もアルバイトに行けなかった。
「マスター‥‥長い間お休みして
ご迷惑をおかけしました。」
咳は殆ど出ず体調は落ち着いたものの、
念の為マスクをしたまま8日ぶりに
珈琲専門店へと来ることができた。
久しぶりの香ばしい香りに包まれると、
ホッとしてしまうほど癒されていく
『霞さんお帰りなさい。
気にすることはありませんよ。
無理のないように
働いてくださいね。』
「はい、ありがとうございます。」
久しぶりのマスターの優しい言葉に
胸が温かくなり、お辞儀をすると
フロアに出ていつものように働いた
募集なんてしていなかったのに、
私の熱意に参りましたと
快くバイトとして雇ってくれた
マスターともあと1ヶ月でお別れだ
勿論お店はなくならないし、
次はお客として珈琲を飲みに来れば
いいのだけれど、やっぱり思い入れが
ある分、考えるととても寂しい‥‥
カランカラン
「いらっしゃいませ。
お好きな席に‥‥‥ッ」
おしぼりを補充していた私は、
ドアの向こうから入ってきた人に
心臓が大きく跳ねた
『こんにちは』
『い、いらっしゃいませ‥‥
こ、こんにちは。』
筒井さん‥‥‥
いつもの窓際には行かずに、
カウンターに荷物を置くと、鞄から
綺麗に折り畳まれた水色の傘を私に
そっと差し出してくれた
『先日はありがとう。
おかげさまで濡れずに帰れたから
助かったよ。』
ドクン



