玉響の花雫    壱

期間が1月だと、少しは人やその場所に
慣れてきた頃だと思うしまた新しい部署で1から学ぶのは私にはハードな
気がしてしまう‥‥



『私はね、企画部がいいな。
 とにかく楽しそうだから。』


企画部かぁ‥‥


私がここを選んだのは、経営理念が
しっかりしてるだけじゃなく、
保険や労災、有給、育休、産休などが
整っていて女性にとても
優しいと思えたのもある。


あとは、不純な動機だけど、
ここのチョコレートと
一緒にならブラック珈琲が飲めるのだ。


小さい時は
こんな高いチョコレートじゃなく、
スーパーで買う板チョコなどを頑張ったご褒美に貰うだけでも嬉しかったけど、
自分でアルバイトしたお金で初めて
買ったのがDUELのチョコレートで、
包装紙をあけるドキドキ感や、
口に入れた時の幸せで
とろけてなくなる感動を今でも覚えてる


沢山日本にも
チョコレートメーカーがあるけれど、
毎年ここのチョコレートを
頑張った自分に必ず買うのも
今では楽しみの一つなのだ


筒井さんがいる人事部は
新入社員は取らないと
記載されているから、
それだけでホッとした私は、
ランチを終えて帰宅した後も
説明書を読んで悩んでいた


「はぁ‥‥‥どうしよう‥‥
 部署が全然決められない‥‥‥。」


菖蒲みたいに
やりたいこととか行ってみたい
部署も本当に分からない‥‥


マスターのお店に入った時のような
ここで働きたいっていう
情熱が少ないのか、自分の道が
何が正しいのか見出せないでいる。



筒井さんならなんて答えるのかな‥‥


ここで会えるのを待ってたって‥‥
どういう意味なのだろう‥


あんな告白をされて
相当迷惑だったと思うし、
断った相手が偶然だけど同じ会社に
入ってきて気持ち悪くないのかな‥‥



結局紙には何も書けないまま
次の日から新人研修がスタートした。


昨日あれだけ
沢山の新入社員がいたのに、
本社勤務は僅か8名のみで驚いた。


1番大きな本社だからもっと沢山
いるかと思ってたのに意外すぎる


東京、名古屋、大阪、福岡、北海道、
と大きな都道府県プラス、数箇所に
工場や製造があり、みんな各場所で
新人研修がスタートしていく


心強いのは菖蒲がいたことだ。


家からここまで電車で通えない距離では
ないけれど、会社から二駅ほど
離れた場所に母の知り合いが安く
譲ってくれたマンションがあり
そこで一人暮らしを始めている。


菖蒲も一人暮らしだし、
会社で1人ではないことがどれだけ
今の私には安心することに
繋がっているか計り知れない。


『霞、頑張ろうね。』


「うん、頑張ろう。」