だがそんな生活を強いられても尚、家政婦を雇えなかったのは自分たちの人気の高さ故であるのだから救いようがない。

⦅ふん、呆れたものだ。誰にでも愛想を振りまいておるからそうなるのだ⦆

「だからアルスィちゃんが来てくれることで、ようやく人並みの生活を送れそうで安心したよ」

「…そうですか」

ミイルのその言葉に嘘はないように感じた。

「まだ家政婦(仮)だけど、本採用になれるように僕は応援するからねっ」

出口がもう目の前ところで、ミイルが振り返り小さく手招きする。

それに従って数歩進んで近づいた私の耳に、無駄に甘い声で囁く。

10人中9人は振り向くような極上の笑みを浮かべながら。

「だから僕がずぅっと応援できるように、大人しく雇われてね?アルスィちゃん」