───びゅううう



強い横風が頬に触れていく。


刹那、覚えのある匂いが鼻先をつついた。


これは…



「羽生先輩…」



隣に声をかけてみればすでに先輩もなにかの気配を察しているらしく、主に後方に目を光らせている。



「先輩…この匂いって…」


「うん。ロウソクの匂いだ」


「やっぱりそうですよね」



不思議だ、ロウソクの匂いなんて短い人生でほとんど嗅いだことはないはずなのに。


私はなぜかそれをよく知っている気がした。



「さらに厳密に言うと…ロウソクの火が──消えた匂い」





────ザァァァァ





私たちの声を掻き消すようにまた強い風が吹いた。


木々が鳴いているみたい。


さらに濃くなる匂いに、強烈な胸騒ぎがした。