慌てたようにあとを着いてきた羽生先輩が困惑しながら私の隣に並ぶ。
「いくらなんでも即決すぎない?」
「同じ景色にも飽きました。こっちを選ばない理由がどこにあるんです?」
「蕎麦屋の前ではあんなに躊躇してたのに…」
「蕎麦屋に関しては無銭飲食に抵抗があっただけです。竹林を歩くのに金はかかりませんからよろこんで味変させてもらいましょうよ」
「大胆不敵すぎてお釈迦様もびっくりするね」
「不敵もなにも死んでるんですから怖いものなどありませんよ。ここまで来た人間に奪れる命があるのなら見てみたいですね」
死が救いであったタイプの私には面白いくらいこの世界に恐怖とやらを感じなかった。
特別に生き返らせます、と言われた方がよっぽど怖いくらいだ。



