先輩は感情がかなり豊かだと思う。私の数百倍。
しかしただ感情的ということではない。
人よりも深く喜び悲しみ、それをきちんと毛布にくるめてはじめて人前に出すのだ。
そういうことができる人なんだ、羽生先輩は。
だから居心地がいいし、私みたいなのでも懐いてしまえた。
羽生先輩を嫌う人間がこの世に存在するのかと疑ってしまうほど素敵な人だ。
なのに、どうしたものか。
そんなものどこに隠していたのかと訊きたくなるような、執着心。
鈍い私にも感じ取れてしまうほど強いそれを、羽生先輩自身も制御出来ていない気がする。
先輩は私をどう思っているのだろう。
好意は言動でこれでもかと伝えてくれるけど、それにしたって度が過ぎている。
ただひたすら向けられる独占欲に戸惑うことしかできないのだろうか。
互いの気持ちのすれ違いにはなんとなく気づいていたけれど、やはり寂しい。
寂しいけれど、この手を離す気はない。
決めたからには、誓ったからには
羽生先輩のそばにいるんだ。
終わりがくる、その瞬間まで。



