先輩に繋がれている右手の温もりが、ずいぶん昔にも思える記憶と重なった。
───『永遠、今日の晩ごはんはハンバーグだよ』
耳を掠める、母の声。
歩いたな。
夕焼けの中、手を繋いで。
「永遠ちゃんらしいね。どちらも選択しない理由が、優しい。それなのに、望めば答えをくれる」
「そこまで褒められたことは言っていませんし、私は優しくないですよ」
「優しいよ。哀しいくらい」
どうしてそんな泣きそうな声を出すのか。
羽生先輩には笑っていてほしいのに。
温和を体現したような人は、この世界で再会を果たしてからなかなかに情緒が不安定だ。



