「誰がどう名前をつけても咎められることはない。善人も悪人も選ぶことなくただ平等に広がっているだけ。空ってのはそういう存在でいいと思うんです」
「……」
「まぁ…羽生先輩が雑談としてこの話を振ってくれたのであれば、そうだな…私は夕焼けに近いと思います」
「どうして?」
「夕焼け空の下を歩いている時って、どこかへ帰っているような心地になるんですよ。もう帰る場所などないのに、今まさにそんな気分なんです」
言葉にしてみて、自分はこのオレンジ色にそんな感情を抱いていたのだと実感する。
自分のことなのに自分がまったくわからない。
齢17という、まだ自己形成すら終わっていない時期にここへ来てしまったのだから無理もないけれど。
私はどこへ帰ろうというのか。
全身にまとわりつくこの感覚は
帰る場所など無い私へ向けた天界からの皮肉なのか。



