大きな羽の中は温かいけど、それ以外の温もりを知ることはけっして許してくれない。
際限のない独占欲を秘めた厄介な天使。
「立てる?傷は痛くない?」
「はい…平気です」
手を貸してもらいながらゆっくりと立ち上がった。
膝を擦りむいてしまったけど、心配性の天使がうるさいから言わない。
真白かった床は、私のせいで一部が赤に変わっていた。
こんなに血を流しても案外平気なもんだ。
あの世ってすごい。
「ねぇ永遠ちゃん。
ここを離れる前に鐘を鳴らしていこうよ」
「鐘…ですか」
「うん」
手を引かれ、鐘の真下まで連れられる。
見上げた空洞はまるで夜空のようだった。



