きっと消えない秋のせい


考人の悩みは、あたしには分からない。
でも、悩んでいることの重さが伝わってくる気がする。
だから、あたしも、今の考人に伝えたいことがあるんだ。

そう思った途端、胸が熱くなる。

――そうだ。
大事なこと、忘れてた。

あたしには、考人の気持ちは見えない。
そして考人にも、あたしの気持ちは見えないんだ。
それなのに先程、抱いた疑問を伝える努力、足りていない。
あたしはゆっくりと深呼吸をする。
そして、勇気を出して口にした。

「あのね。考人がどんなことで悩んでいるのか分からない」

心臓がどきっと音を立てる。
それでも伝えたい言葉を探してみると、それらはいとも簡単に生み出されてきた。

「だけど、あたし、今の考人のこと、見ているから。ちゃんと見ているから」

考人が抱えている悩みが分からない。
それがすごく悔しくて、もどかしくて、嫌なんだ。
だから、今の考人のことをもっと知りたい。

「だって、あたしもずっと、今の考人に振り向いてほしいって思っていたんだもん」

何も言わなかったら、悪いことは起きない。
だけど、黙っていたら、何も起きない。
ぜんぶ、なかったことになっちゃう。
そんなのは嫌だから。

「それに以前の考人も、今の考人も、どちらも優しいって知っている」

少しずつ、知っていきたい。
明日も明後日も、今の考人のことを。
だから、あたしはちゃんと声に出して、言葉にしなくちゃいけない。
そう思ってもう一度、大きく深呼吸をする。
そして、めいっぱいの思いの丈をぶつけた。

「あたし、もっともっと、今の考人のこと、知りたい!! もっともっと、今の考人のそばにいたい!!」

一息でそうまくし立てると、考人はすごくびっくりした顔をした。
そして……不自然に思えるほど長い沈黙の後、言葉を口にしたのは考人が先だった。

「……うん。僕も、今の杏のこと、もっと知りたい」

そう言って笑った考人を見て、あたしの心はぎゅっと熱くて苦しくなる。

……やっぱり、あたし、考人のことが大好きだ。

だって、考人が言ってくれた言葉が、あたしの心にじわじわと染み入ってくるから。
考人からもらったものは、こんなにも嬉しいのだ。
だからこそ、あたしはこのかけがえのない時間をめいっぱい楽しみたいと願った。