きっと消えない秋のせい


「幼稚園の卒園式、『おれたち、ライバルになるかもな』って言ってたけど……ライバルも何も、まるで勝負になっていないな」

あまりに唐突で、意味が分からなかった。
その言葉に混乱しつつ、口を開いた。

「なんのこと?」
「……訳分からないことを言ってごめん」

あたしがきょとんとすると、考人は力なくつぶやくように言った。

「ただ、ずっと振り向いてほしくて……望みはないって分かってるのに」

考人は首を振って、心にこびりついたものを振り払う。

「それでも、どうすれば、僕のことを見てくれる? どうすれば、近づけるんだろ? ……ずっと、そう思ってたから」

考人は空を見上げて寂しそうに言った。
まるで、ひた隠しにしていた切ない感情がじんわりとにじみ出ているように。

「だけど、まさか、こんなカタチで叶うなんて思わなかった……」

考人はどこか苦しそうにあたしを見た。

「本来なら、杏と一緒に遠足に行くなんて、一生なかった。それなのに、これからはこれが当たり前になるんだな……って思って」

意味深な言葉に、あたしはぽかんとする。
まるで、考人は奇跡が起きたように言ってたから。
あたしが首をかしげていると、さらに不可解なことを口にした。

「……そう思うと、不思議な感じがする。ずっと、杏たちのことを考えていた。また、会えるその日を待ち望んで……」

えっ? また、会えるその日、って?
いつも会っていたのに?
あたしの疑問を読んだかのように、考人はかみしめるようにうなずいた。

「だから……長い間、待ち続けていた時間が一瞬で報われるような……」
「長い間?」
「……っ」

ますます混乱したあたしに、考人ははっとする。
そして、ゆっくりと首を横に振ると、取り繕うように言った。

「変なこと言って、ほんとにごめん。杏、気にしないで……」

気がついたら、胸の奥にたまっていたものを一気に吐き出していた。
あたしには、今の考人の姿がそんなふうに見えた。
何だか、思いつめているような感じに、胸がざわざわした。