きっと消えない秋のせい


「これで完成!」

最後のスタンプをぽんと押すと、用紙はいろいろな動物のスタンプで埋まった。
やったー!!
スタンプ、全て押せたよ!!
でも、結局、一番にゴールすることはできなかった。
スタンプラリーを最初に制覇したのは、隣のクラスの人たちだった。

「わあっ! 佐東(さとう)くんたちの班、すごいね!」
「佐東くん、おめでとう」
「ありがとう」

整った顔につやつやの黒い髪。
とびきりかっこいい男の子が、隣のクラスの女の子たちに囲まれているのが見えた。

「ちくしょー。次にスタンプラリーをする時は一番になるぞ」
「ううっ……」
「次、頑張ろ」

当然、通谷くんは不満爆発だ。
あたしもしょんぼり。
そんなあたしたちを、高柳さんは励ましてくれた。

「……ん? あれっ?」

しかも、あたしはリュックサックにしまったはずのハンカチがないことに気づく。
もしかして、スタンプラリーをしている時に落としたんじゃ!?
さーっと血の気がひくのが分かった。

「ごめん! あたし、ちょっと、探しものしてくる!」
「えっ? 片岡さん!」

高柳さんの制止を振り切って、あたしは駆け出した。
慌てて、来た道をひきかえす。
スタンプラリーの時に落としたのなら、きっとその道をたどったら、見つかるはずだ。
そう思ったけど、一向に見つかる気配はない。
木の根もととか、すべり台の陰とか、いろいろと探してみるけれど、見当たらない。
がっくりとうなだれていると。

「杏、ハンカチ」

考人はハンカチを差し出してきた。
あたしは驚いて、ぱっと顔を上げる。

「えっ! なんで……」
「ブランコの近くで見つけたんだ」
「そうなんだ……。良かった……」

あたしはかがむと、ぎゅっとハンカチを握りしめる。

「考人、ありがとう。失くしたら、どうしようかと……」
「……そっか、ありがとう。こんなに大事にしてくれて」

優しい声が降ってきた。
ふわりと温かい。
あたしと考人だけの空気がある。
そんな感覚だった。

「あの日、あげたハンカチが、杏の力になれたのなら良かった」

手をのばせば届くところに、考人がいる。
今まで当たり前じゃなかったことが、当たり前に戻った。
だから、考人のくれる温もりがそのまま、あたしの勇気となるんだ。
そう実感していると、考人は真剣な眼差しで言った。