きっと消えない秋のせい


「六個のスタンプを集めなきゃ!」

あたしは用紙をもって、通谷くんの後ろをついていく。
既に、先生がいたという噂が広まっているのだろうか。
すべり台の周りには、結菜たち以外の班もたくさんいた。

「スタンプ、どこにあるのかな?」

ぐるりと辺りを見渡せば、他のクラスの人たちもスタンプを探しているのが目に入った。
スタンプラリーでは、公園の中のいくつかのチェックポイントを班ごとにめぐる。
チェックポイントにスタンプが置いてあるんだけど。
そこに辿り着いたら、各班に一つ渡された数字の書かれたスタンプラリー用の用紙にスタンプを押していくんだ。
だから、他にスタンプラリーをしている人がいれば、その人の行動がヒントになる!

「あっ! スタンプ、発見!」

目を向けた先には、別の班の男の子がスタンプを押している。
だけど、男の子の後ろには、ずらりと他の人たちが並んでいた。

「あたしも並ばないと!」

あたしは大慌てで列に並ぶ。
そして、順番が回ってくると、犬さんのスタンプをポスっと押した。
これで一個目のスタンプ!
でも、順番待ちしていたから、少し出遅れてしまったみたい。

「あ……」

あたしは思わず、間の抜けた声を出してしまった。
だって、あたしたちの後ろで、スタンプを押した班の人たちの用紙。
そこには、既に二個のスタンプがあったから。

「これじゃ、一番にゴールできねえ!」

思わぬ事実を前にして、通谷くんは頭がこんがらがりかけていた。

「さすがに、一番は難しいよね」

もう一人の班の女の子、高柳さんもお手上げ状態。
確かに、他にスタンプラリーをしている人がいれば、その人の行動がヒントになるんだけど。
一番にゴールするためには、それじゃダメみたい。
あたしが不安になっていると。

「……うーん。あまり人がいないところから、スタンプを押していった方がいいかもしれない」
「それだー!!」

考人が出したアイデアに、通谷くんは声を上げた。
確かに、あまり人がいないところなら、すぐにスタンプを押せそう。
あたしは隣を歩く考人の手を取り、微笑んだ。

「考人、次のチェックポイントに行こ!」
「……うん」

考人もはにかみ、あたしの手を握り返す。
心なしかいつもより高く見えるのは、目が痛くなるほど……澄んだ秋の空。
好きな人と過ごす時間は、それだけで楽しい。