きっと消えない秋のせい

すごい。
やっぱり、考人の言葉って、人を笑顔にする魔法を持っている。

考人たちが隠している真実。

今は何も分からないけど、少しでも追いつけるように。
明日もきっと、いい日になるように。
少しでも考人に届くように、明日も頑張ろう。

(だけど、今はもう少しだけ、このままふわふわしたまま、小さな幸せに胸をふくらませていたい)

ブランコをゆらゆらと揺らしながら、あたしは澄んだ空を見つめていた。



通谷くんたちに導かれて、いろいろなアスレチックを楽しんだ後。
公園の広場で、班ごとにお昼ごはんを食べることになった。
あたしと考人は、通谷くんたちと一緒に、広場の隅に場所をとってお弁当を広げる。

「うわあっ! 考人のお母さんが作ったお弁当、すごい!」
「……杏のお母さんが作ったお弁当もすごいね」

いつものぶっきらぼうな言葉が、今はあたしを強くしてくれる。

「んーっ! おいしい!」

お弁当を食べながら、周りを見渡す。
周りのみんなも、スタンプラリーの話で盛り上がっている。
お弁当を食べ終わったら、公園でスタンプラリーが行われる予定だ。
だけど、この公園、かなり広いから、どこにスタンプがあるのか分からないよ。
わくわくする感情の背後には、いつも不安がつきまとってくる。
それなのに……。
それでも一番にゴールしたいと思ってしまうのは、考人が同じ班だからだと思う。

「結菜。スタンプラリーが始まったら、すべり台、行こ! さっき、先生がそこにいるのを見たよ!」
「えー、マジでー!」

ざわめく広場の中心から、甲高い声が聞こえてくる。
瞬き一つで世界の色を変えるように、結菜の表情は様々な感情を乗せていた。
それが女の子らしくて可愛らしいと感じてしまう。

「行こ行こ、楽しみー」

結菜は仲のいい友達と楽しげに話しながら、お弁当を食べていた。
どうやらすべり台の近くに、スタンプが置いてあるみたい。

だったら、すべり台に行かなくちゃ!

あたしはがぜん、やる気を出す。
お弁当を食べ終わった後、しばらくしてからスタンプラリーが始まった。

「よっしゃー、張り切って行くぜ!!」
「うん! まずは、結菜たちが言ってたすべり台!」

通谷くんを先頭に、あたしは歩き始めた考人の隣に並んで歩く。
ブランコを通りすぎて、目的のすべり台に向かう。
季節はもうそろそろ、夏から秋の兆しを見せていて少し寒い。