「ありがとう。すごく嬉しかった」
「……っ」
その感謝の言葉に、考人の瞳が揺れる。
ずっと無視していたことへの罪悪感を感じているのだろうか。
どこか気まずそうな感じだった。
「考人。これからもずっとそばにいてね」
「………」
明確な答えは返ってこなかったが、考人は仕方がなさそうにため息を吐いた。
バスの空気がぽかぽかと温まる。
瞳に映る考人の横顔が、春の温もりのように感じられたんだ。
だけど……こういう時、もっと近づけるような。
あと、ほんの少しを乗り越えるための勇気がほしい。
そう思っていると、大きな公園の前でバスが止まる。
「公園に着いたー」
あたしはバスを降りると、澄んだ空気をゆっくりと胸に吸い込んだ。
「じゃあ、ここからは班ごとに分かれて、行動すること。先生たちは、公園の周りに立っている。何かあれば、すぐ連絡するようにな」
「はーい」
小林先生の説明に、あたしたちは元気よく返事した。
ここまではバスに乗ってきたけど、ここからは自由行動。
あたしと考人は同じ班だから、一緒に回ることができる。
そして――。
「よっしゃー!! お昼からのスタンプラリーのためにも、公園をぜんぶ回ってみせるぜー!! まずはブランコだ!!」
通谷くんの叫ぶ声が聞こえた。
思いっきりガッツポーズをして、身体を反り返している。
元気いっぱいな通谷くんも同じ班なんだよね。
そして、お昼からのスタンプラリーのイベントは、あたしもすごく楽しみなんだ。
スタンプラリーは、スタンプを集めるゲームなんだけど。
正直、全てのスタンプを集めるのは大変そう。
だけど、そんなあたしの不安を吹き飛ばすように、通谷くんはこぶしを突き上げて言った。
「考人。お昼からのスタンプラリー、俺たちが最初にゴールにたどり着こうな!」
「……うるさい。巧、お昼ごはんまでに、公園を全て回るのは無理だ」
「そっちこそ、うるせー!」
淡々とした口調の考人と口を尖らせた通谷くん。
二人を中心に、会話が盛り上がっているみたい。
でも、考人の言うとおり、この公園、かなり広いよ。
ぜんぶ、回れるのかな。
そう思っていると、考人は通谷くんたちと一緒にブランコに向かおうとしていた。



