きっと消えない秋のせい

そんな想いで迎えた日曜日。
あたしは玄関の前で、外を見つめて立ち尽くしていた。

……大雨。

天気予報では晴れだったのに、ザー……と雨がしきりに降っている。
辺りは霧がかかったみたいに曇っていて、あたしは目を細めた。
……こんな雨の中、バス停まで歩いたら、傘をさしていてもびしょ濡れになってしまう。
久しぶりに考人と一緒に出かける日に限って、大雨。
ついてないっていうか、ため息が出るんだけど……。

「こりゃ、止みそうもないぞ。杏、別の日に変えた方がいいんじゃないか?」

お父さんも困った表情で、玄関の前で立ち止まっている。
うーん。どーにかしないと、せっかくのお出かけが台無しになっちゃう。仕方ない。

『お願い、今すぐ雨が止みますように!』

あたしは手をぱんぱんと叩いて、心の中で強く祈ったんだ。
すると、先程までの大雨が嘘のように、ぴたりと止んだ。

大成功ー!

やがて、陽射しが出てきて、優しい風が顔に当たる。

……気持ちいいな。
秋のぬくもりだ。

あんなに土砂降りだった雨が止んで、澄んだ匂いがする。
……雨の匂いは優しくて、どんな嫌なことも、忘れられる気がした。

「ふふん。もし、あたしが『お天気キャスター』になったら、必ずお天気が当たるって有名になるかも」

あ、お天気キャスターっていうのはね、お天気の情報をみんなに伝える仕事なんだ。
お天気キャスターのお父さんは、いつもテレビでみんなにお天気の情報を伝えている。
テレビの中のお父さんはかっこよくて、あたしもいつか、お天気キャスターになりたいって思っているんだ。
そんな憧れのお父さんが不安そうにあたしの頭を撫でる。

「杏。傘、持たなくて大丈夫か?」
「大丈夫! じゃあ、行ってきまーす!」

慌ただしいお父さんの声を置き去りにして、あたしは元気よく外に出た。