「お、お邪魔します」
学校が終わって、放課後。俺達スートがいつもの通り瞬の家に集まった後、少し遅れて奈津がやってくる。
「遅くなってごめん」
「いいって。って言うか、一人だけ学校も住んでる街も違うし、時間かかるよな」
「だから、学校に車で迎えをやろうかって言っただろ」
「む、迎えは遠慮しておく」
瞬の提案を断る奈津。俺達は慣れたけど、学校に高級車で迎えにこられたらビビるか。
それから、全員で練習開始。
昨日と同じく基礎練習がほとんどだけど、今日は少しだけ、曲に合わせた動きをやってみた。
まだ全然うまくはないけど、この前あげた動画でも踊ったやつだ。大きな失敗をすることはない。
はずなんだが、今日の俺はミスが多かった。覚えてるはずの振り付けで、何度も失敗している。
「もしかして、オレの教え方が悪かった?」
奈津が不安そうな顔をするけど、それは違う。
「恭弥以外はちゃんとできてるから、それはないでしょ」
「単にコイツが振り付け忘れてただけだな」
うるせえな。
って言うか、原因はだいたいわかってる。今日あったことが気になって、集中できてない。それだけだ。
「奈津。ちょっといいか?」
「なに?」
練習が一段落ついたところで、奈津に声をかける。この話をするなら、こいつ以外にいない。
「お前の従姉妹の、奥村亜希。あいつが前髪伸ばしてるのって、何か理由あるのか?」
「えっ?」
「今日、あいつの前髪どかしたら、声をあげられたんだよ。もしかして、悪いことしたかも」
本人はびっくりしただけだと言っていたけど、どうにも気になった。
もし本気で嫌がってたなら、明日もう一度謝った方がいいかもしれない。
「と、特に深い理由はなかったと思うから。恭弥イケメンだから、いきなり触られて驚いただけだと思う」
「そうか?」
「そう。だから、恭弥が気にすることなんてなよ! 絶対、大丈夫だから!」
必死になって大丈夫と言う奈津。
そこまで言うと逆に何かあるんじゃないかと疑いたくなるが、とりあえず素直に受け取っておこう。
「それならいいんだけどな。って言うか、サラッと人をイケメンとか言うな。恥ずいだろ」
「ご、ごめん!」
だいたい、イケメンっていうなら奈津だってけっこうなものだ。
けど見た目をどうこう言うなら、それ以上に気になるやつがいる。
「それはそうと、奥村ってめちゃめちゃ可愛くないか?」
「…………えっ?」
俺の言葉に、奈津は信じられないって感じで固まる。
嘘だろ? 俺にはその反応の方が信じられないぞ。
練習中、俺が集中できなかった最大の原因がこれだったんだぞ。
「前髪どかした時チラッと顔を見たけど、びっくりするくらい可愛かったぞ。お前、従兄弟なんだし知らないわけないだろ。前髪で顔隠してるの、もったいないと思うんだけどな」
「そ、そんなことないよ!」
声を張り上げ、俺の言葉を遮る奈津。
しかも、なぜか顔を赤く染めながら、凄い勢いでまくし立ててくる。
「か、可愛いなんてことない! 地味だし、華がないし、それに、その、ブスだし……」
「おい。ちょっと待て!」
一瞬、勢いに圧倒されそうになるが、今度は逆に、俺が奈津の言葉を止めた。
いくらなんでも、今のは黙ってられない。
「お前、言っていいことと悪いことがあるだろ。そういうの、言われた方は傷つくかもしれないだろ」
悪口や陰口ってやつは、言う側は軽い気持ちでも、言われた方はすごく傷つくことだってある。
そういうのは身をもって知ってるから、今みたいなのを聞くと、どうにも我慢できなかった。
「ご、ごめん」
とたんに、シュンとして肩を落とす奈津。
しまった、言い過ぎたか?
「ま、まあ、お前にとっては身内だし、つい言い方がきつくなることもあるかもしれないな。けど、少しは気をつけたほうがいいんじゃないか?」
「うん。そうだね」
俺だって、そこまで強く責めようとは思わない。
やんわりと注意すると、奈津も小さく頷いた。
けど、あんなにハッキリ可愛くないとか言うとは思わなかったな。
奈津とはまだ知り合ったばかりだけど、そんなこと言う奴には見えないし、だいいち奥村はどう見たって可愛いだろ。
従姉妹ってことは小さい頃から見慣れてるだろうから、感覚がずれてるのか?
「…………ん?」
なんだろう。奥村を思い浮かべながら奈津の顔を見ると、何か引っかかった。
それが何なのか気になって、ますます奈津の顔を覗き込む。
「あ、あの、恭弥……?」
「あっ、悪い」
戸惑う奈津を見て我に返るけど、その時気づく。
奥村と奈津。二人とも、凄くよく似てるんだ。
そりゃ親戚なんだから、ある程度似てたって不思議じゃない。けど双子じゃあるまいし、奈津は男で奥村は女。ここまで似ることってあるか?
不思議に思っていると、怜央が声をかけてきた。
「二人でなに話してるの?」
「別に、こいつの従姉妹の話をしてただけだ」
「それって、最初恭弥にスピーカー返してって言ってきた人だよね。奈津とは似てるの?」
びっくりするくらい似てる。
そう言おうとしたけど、俺より先に奈津が言う。
「に、似てない。全然、全く、これっぽっちも似てないから!」
何言ってるんだ。そんなわけないだろ。
さっきから奈津の言ってることがおかしくて、わけがわからなくなる。
お前が女装したら、奥村と見分けがつかなくなるくらい似てるだろ!
「待てよ。まさか……」
その時、ある考えが浮かんだ。
それは、とてもめちゃくちゃで、バカバカしいもの。なのに、なぜかすぐには否定できなかった。
奈津と亜希。この二人、実は同一人物なんじゃないのか?
学校が終わって、放課後。俺達スートがいつもの通り瞬の家に集まった後、少し遅れて奈津がやってくる。
「遅くなってごめん」
「いいって。って言うか、一人だけ学校も住んでる街も違うし、時間かかるよな」
「だから、学校に車で迎えをやろうかって言っただろ」
「む、迎えは遠慮しておく」
瞬の提案を断る奈津。俺達は慣れたけど、学校に高級車で迎えにこられたらビビるか。
それから、全員で練習開始。
昨日と同じく基礎練習がほとんどだけど、今日は少しだけ、曲に合わせた動きをやってみた。
まだ全然うまくはないけど、この前あげた動画でも踊ったやつだ。大きな失敗をすることはない。
はずなんだが、今日の俺はミスが多かった。覚えてるはずの振り付けで、何度も失敗している。
「もしかして、オレの教え方が悪かった?」
奈津が不安そうな顔をするけど、それは違う。
「恭弥以外はちゃんとできてるから、それはないでしょ」
「単にコイツが振り付け忘れてただけだな」
うるせえな。
って言うか、原因はだいたいわかってる。今日あったことが気になって、集中できてない。それだけだ。
「奈津。ちょっといいか?」
「なに?」
練習が一段落ついたところで、奈津に声をかける。この話をするなら、こいつ以外にいない。
「お前の従姉妹の、奥村亜希。あいつが前髪伸ばしてるのって、何か理由あるのか?」
「えっ?」
「今日、あいつの前髪どかしたら、声をあげられたんだよ。もしかして、悪いことしたかも」
本人はびっくりしただけだと言っていたけど、どうにも気になった。
もし本気で嫌がってたなら、明日もう一度謝った方がいいかもしれない。
「と、特に深い理由はなかったと思うから。恭弥イケメンだから、いきなり触られて驚いただけだと思う」
「そうか?」
「そう。だから、恭弥が気にすることなんてなよ! 絶対、大丈夫だから!」
必死になって大丈夫と言う奈津。
そこまで言うと逆に何かあるんじゃないかと疑いたくなるが、とりあえず素直に受け取っておこう。
「それならいいんだけどな。って言うか、サラッと人をイケメンとか言うな。恥ずいだろ」
「ご、ごめん!」
だいたい、イケメンっていうなら奈津だってけっこうなものだ。
けど見た目をどうこう言うなら、それ以上に気になるやつがいる。
「それはそうと、奥村ってめちゃめちゃ可愛くないか?」
「…………えっ?」
俺の言葉に、奈津は信じられないって感じで固まる。
嘘だろ? 俺にはその反応の方が信じられないぞ。
練習中、俺が集中できなかった最大の原因がこれだったんだぞ。
「前髪どかした時チラッと顔を見たけど、びっくりするくらい可愛かったぞ。お前、従兄弟なんだし知らないわけないだろ。前髪で顔隠してるの、もったいないと思うんだけどな」
「そ、そんなことないよ!」
声を張り上げ、俺の言葉を遮る奈津。
しかも、なぜか顔を赤く染めながら、凄い勢いでまくし立ててくる。
「か、可愛いなんてことない! 地味だし、華がないし、それに、その、ブスだし……」
「おい。ちょっと待て!」
一瞬、勢いに圧倒されそうになるが、今度は逆に、俺が奈津の言葉を止めた。
いくらなんでも、今のは黙ってられない。
「お前、言っていいことと悪いことがあるだろ。そういうの、言われた方は傷つくかもしれないだろ」
悪口や陰口ってやつは、言う側は軽い気持ちでも、言われた方はすごく傷つくことだってある。
そういうのは身をもって知ってるから、今みたいなのを聞くと、どうにも我慢できなかった。
「ご、ごめん」
とたんに、シュンとして肩を落とす奈津。
しまった、言い過ぎたか?
「ま、まあ、お前にとっては身内だし、つい言い方がきつくなることもあるかもしれないな。けど、少しは気をつけたほうがいいんじゃないか?」
「うん。そうだね」
俺だって、そこまで強く責めようとは思わない。
やんわりと注意すると、奈津も小さく頷いた。
けど、あんなにハッキリ可愛くないとか言うとは思わなかったな。
奈津とはまだ知り合ったばかりだけど、そんなこと言う奴には見えないし、だいいち奥村はどう見たって可愛いだろ。
従姉妹ってことは小さい頃から見慣れてるだろうから、感覚がずれてるのか?
「…………ん?」
なんだろう。奥村を思い浮かべながら奈津の顔を見ると、何か引っかかった。
それが何なのか気になって、ますます奈津の顔を覗き込む。
「あ、あの、恭弥……?」
「あっ、悪い」
戸惑う奈津を見て我に返るけど、その時気づく。
奥村と奈津。二人とも、凄くよく似てるんだ。
そりゃ親戚なんだから、ある程度似てたって不思議じゃない。けど双子じゃあるまいし、奈津は男で奥村は女。ここまで似ることってあるか?
不思議に思っていると、怜央が声をかけてきた。
「二人でなに話してるの?」
「別に、こいつの従姉妹の話をしてただけだ」
「それって、最初恭弥にスピーカー返してって言ってきた人だよね。奈津とは似てるの?」
びっくりするくらい似てる。
そう言おうとしたけど、俺より先に奈津が言う。
「に、似てない。全然、全く、これっぽっちも似てないから!」
何言ってるんだ。そんなわけないだろ。
さっきから奈津の言ってることがおかしくて、わけがわからなくなる。
お前が女装したら、奥村と見分けがつかなくなるくらい似てるだろ!
「待てよ。まさか……」
その時、ある考えが浮かんだ。
それは、とてもめちゃくちゃで、バカバカしいもの。なのに、なぜかすぐには否定できなかった。
奈津と亜希。この二人、実は同一人物なんじゃないのか?


