「次回は今日までの範囲で小テストするからな。五十点以下は再テストだから覚えとけよ」
授業が終了するチャイムと共に、世界史の先生が去り際に吐いたセリフに教室中が絶句する。
「はぁ!?聞いてねーよ!てか再テスト五十点以下ってどんだけハードル高いんだよ!半分じゃダメなのかよ!?」
幾人かの男子が頭を抱えながら顔を青ざめているのを横目に、私は次の体育の準備をしていた。
ロッカーから全身モスグリーンのジャージを取りだし、広げれば胸元には“2-8山田 加代”と白字で自分のクラスと名前が書かれている。
今時フルネームが書かれているジャージなんてうち以外に存在するのだろうか……。
しかも“山田”という自分の名字が、田舎っぽいモスグリーンのジャージとよくマッチしてるから悲しい。
私はロッカーに備え付けた鏡を見ながら、後ろに結わえていた背中まで伸びた髪を縛り直した。