黒縁メガネとワンピース

その時、突如布の擦れる音が聞こえ、私はそこではたと我に返った。

「……佑樹……」

いつの間に目が覚めていたのか。虚な目でゆう君の姿を捉えると、紺野さんはゆっくりと手を伸ばす。

「麻衣、大丈夫か?」

彼女の求めに応じるよう、ゆう君は紺野さんの手を優しく握ると、ゆっくりとした口調でそう尋ねる。

「ごめんね。あたし、また発作起きたんだ」
 
紺野さんはゆう君の問い掛けに対し、徐に首を縦に振ると、ぼんやりとしたまま天井に視線を向けた。

「思い出しちゃったの。あの頃の自分を。もう断ち切れたと思ったのに……。佑樹が何だか遠くに行っちゃいそうな気がして、怖くて堪らなくなって……」

それから、ポツリポツリと語り出す紺野さんの目から、一筋の雫が零れ落ちる。

「ねえ佑樹。お願い、一人にしないで」

そして、揺れ動く瞳が再び彼を捉えた。


「……麻衣」

まるで縋り付くような。

真っ直ぐ向けられた彼女の視線を、ゆう君は目を逸らすことなく、しっかりと受け止める。


それだけで、私の心はもう崩れ落ちる寸前なのに。


「分かってる。言っただろ?俺が守るって」

それなのに。

やんわりと微笑んで応えた彼の言葉が残酷に突き刺さり、私を奈落の底へと落とした。