黒縁メガネとワンピース

「麻衣とは転校先で一緒のクラスだったんだよ。その頃は特に親しい間柄ではなかったけど、ある日、麻衣が虐められている所を偶然目撃して助けたんだ。それから、こいつとはそれなりに話すようになったかな」

私の問いかけに対して少し間があったけど、後からぽつりぽつりと話し始めるゆう君。

そして、私は“いじめ”という言葉に強く反応してしまった。

まさか、紺野さんも同じ経験をしていたなんて。
強気な彼女からは想像も出来ないけど、身勝手ながら少しだけ親近感を抱いてしまう。

だけど、決定的な違いは、私は一人でひたすら耐えていたのに対し、紺野さんの側にはゆう君がいたこと。

境遇の違いはどうしようもないことだけど、なんだかやるせない気持ちに、胸が痛む。

「それで、ある時教えてくれたんだ。こいつの家の事情を。それが結構悲惨なもんだった」

そんな動揺する私のことなんて露知らず。
ゆう君は続けて話すと、途中で言葉を詰まらせてしまった。

私もそこから先は果たして聞いてもいいものなのか戸惑っていると、ゆう君は一呼吸置いて再び口を開く。

「両親は家庭内離婚状態で、時たま虐待されていたらしい。その当時は児童相談所が掛け合ってて、親戚が引き取るか引き取らないかで揉めてたみたいなんだ」

そして、思いもよらない壮絶な過去に、私は暫く空いた口が塞がらなかった。

まさか、幼い頃からそんな経験をしていたとは。

先程親近感なんて甘っちょろいことを考えていた自分が恥ずかしく思えるくらい、当時の彼女の辛さは計り知れない。

「その時から、麻衣は過呼吸症候群に陥ってた。家が近所だったから、たまに休みの日に遊んだりしたこともあったけど、その時も発作を起こしたことが何度かあったんだ」

そこまで話し終わると、ゆう君は寝ている紺野さんの髪にそっと触れた。

そんな何気ない仕草に、彼女のトラウマ話を聞いたにも関わらず、小さな嫉妬心が湧き起こり胸を締め付ける。

そんな卑しい自分がほとほと嫌になって、私は思わず目を逸むけてしまった。